ピアレビュー2030

ピアレビューの今後を考える新しい報告書

2017年5月3日、ハイデルベルグ | ロンドン

BioMed CentralとDigital Scienceは、ピアレビューに関する新たな報告書を発表しました。この報告書では、ピアレビュー・プロセスについて出版業界全体にわたった現実的な改善のためには、出版社、研究者、資金分配機関、関係機関がこれまでとは異なるさまざまなモデルを試したり、査読者の多様化を奨励したり、人工知能(AI)を活用したり、査読者を訓練・指導を支援したりするなどの取り組みを積極的に行う姿勢が必要だと結論されています。

2016年11月にロンドンのWellcome Collection Conferenceセンターで開催された、SpotOnの会議では、「What might peer review look like in 2030?」(2030年にピアレビューはどうなっているか?)をテーマとして、将来世代の研究者のためにピアレビューをどう改善できるかが検討され、学術界に対して主要な提案が示されました。新しい報告書は、この会議で行われた活発で建設的なセッションに基づいています。

報告書では、ピアレビューの歴史をさまざまな観点から振り返り、持続可能性と倫理など現在の課題を取り上げるとともに、プレプリントサーバーやAIの適用をはじめとする技術的進歩も含め、ピアレビューの将来に目を向けています。また研究者、司書、出版者や他の方々の協力を受け、彼らの見解を取り上げています。

BioMed CentralのPublishing DirectorであるRachel Burleyは次のように述べています。「ピアレビューが批判されることは少なからずありますが、研究結果を検証し発見を促す上で、重要な役割を果たしていることは間違いありません。我々は、全世界の研究者、そして全学術領域に関わるピアレビューを改善する革新的な方法を探し出すため、あらゆる関係者と協議を始めたいと考えています。この報告書を出版することで、研究コミュニティーに対し、この課題への参加と取り組みを呼びかけているのです。」

この報告書は、急速に状況が進化する学術界において、近年のピアレビューの進歩をいかに活用し、そして改善するための実現可能で革新的な方法をどうやって見つけ出すかについて、BioMed Centralの提案を示しています。
BioMed Centralは以下の事項を提案しています。

  • これまでとは異なる新たなピアレビュー・モデル、特に透明性を高めるモデルを試す。
  • 査読者を見つけ出し、確認・招聘するための、新たな方法を発見・考案する。この際、査読対象の研究に専門分野が緊密に適合することに重点を置く。これにおいてはAIが有用なツールとなり得る。
  • 効率が改善され全関係者に恩恵をもたらすような、関連出版業全体にわたるソリューションの開発に取り組む。ポータブル・ピアレビューはまだ全く軌道に乗ってはいないが、出版プロセスの全関係者の効率が高まる可能性がある。
  • 多様な研究者(若手研究者、さまざまな地域の研究者、女性研究者など)を査読者の候補とする。特に出版社は、認知度の向上に貢献することができ、女性の査読者を集めるための新たな方法を探ることができる。
  • 次世代の査読者が、広く認められている指針に従った有効なフィードバックを提供できるようにするため、査読者向け研修プログラムに投資する。
  • 査読者を認知して、査読という業務を評価するために、資金分配機関、研究機関や出版社が協力する方法を見いだす。
  • 査読者が見落としやすい矛盾点を自動的に特定する方法を開発することなどにより、ピアレビュー・プロセスを支援し、強化する技術を用いる。

BioMed Centralは1999年にオープン・ピアレビューを導入し、「リザルトフリー・ピアレビュー」(査読者は最初の段階では、研究結果を含まないものを査読する)など新しいモデルによる査読を試み続けています。また、手法、プロセス、支援システムに抜本的な変更をもたらすような方法も含め、ピアレビュー・プロセスの改善方法を探っています。

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大場 郁子
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